2月のこと―『ぽかん』あとがき

2月は悲喜交々で過ぎ去っていった。籍を入れ、誕生日を迎えてと、私事にそれなりの動きがありながら節目の意識は乏しく、平生以上の飲み食いに励んでいたら頬の吹き出物がまるで治らなかった。年度末に差しかかり平日は忙しかった気もするのだが、喉元を過…

店を出ればセンチメンタルな気分

学生時分のねぐらたるアパートの近くにある洋食処へ、長らくご無沙汰していたけれどもお伺いした。なあ名古屋の子が来てくれたでと迎えてくれたおばちゃんは、改めて四方山話に興じていると黒柳徹子に似ていると思った。厨房で黙々と調理なさるおっちゃんは…

台湾逍遥の記

昭和14年の秋、内田百閒が勤め先である日本郵船所有の大和丸に乗船し、神戸を出港、台湾本島の基隆へ上陸するまでには、4日を要したという。中部国際空港、台湾桃園国際空港間はたった3時間のフライトだから、航海上の百閒よろしく「ぼんやり」の贅沢さ…

風の海峡を歩いた日

海底トンネルを潜り抜けると下関。会食ではみな酩酊いちじるしく、パナマ運河式閘門が云々、宝塚歌劇の公演といえば云々、「中学生日記」は東野英心で云々、めいめい好き勝手なお喋りにふけって、その場のスナップ写真すら撮り忘れている始末。翌朝は唐戸市…