店を出ればセンチメンタルな気分

 学生時分のねぐらたるアパートの近くにある洋食処へ、長らくご無沙汰していたけれどもお伺いした。なあ名古屋の子が来てくれたでと迎えてくれたおばちゃんは、改めて四方山話に興じていると黒柳徹子に似ていると思った。厨房で黙々と調理なさるおっちゃんは、相変わらず開高健にそっくりの風貌。黒服の多かった気もする仕事着が、今日は爽やかなサックスブルーのオックスフォードボタンダウンシャツのペアルックだったほかに、私が足繁く通っていたあの頃と変わったものがあるとするならば、ただそれだけを注文するのが精一杯だった定食に中ジョッキを付け足すいくらかの余裕が当方に生まれたことくらいだろうか。自家製オレンジジュースとして提供されている飲み物を、食後またしてもコップ1杯おまけにいただいてしまう。潰した缶の蜜柑を残りのシラップと合わせてから甘味を微調整したような、そこはかとなく風変わりで懐かしい味。細身のストローの直径では果実が詰まってしまうものだから、時々は空気を送って逆流させてやらないといけないというのも含めた一切が愛くるしい。